表題

AND-LET*: ローカル束縛を伴う AND、条件付き LET* 特殊フォーム

著者

Oleg Kiselyov

状態

この SRFI は現在「確定」の状態である。 SRFI の各状態の説明については ここ を参照せよ。 この SRFI に関する議論については メーリングリストのアーカイブ を参照せよ。

概要

通常の AND と同じく、 AND-LET* 特殊フォームはその引数 (式) を順番に評価し、 評価値が #f になると評価を中断する。 しかし AND と違って、#f ではない評価値は新しい変数に束縛され、 その変数は後続の式で使用することができる。 つまり、AND-LET* は LET* と AND の合いの子である。

論拠

次のように、ブール値 (#f または #t) に対して通常の AND を適用する場合、
(AND E1 E2 ...)
式 E2 を評価するときには E1 が真値を返したことを知っている。 さらに言えば、E1 は #t を返したことを知っているので、 E2 を評価するときに、この知識に基づいて何らかの効率化を行える。 しかし、E1 が拡張されたブール式である (#f, #t 以外の値を返す) 場合、 E2 は E1 がどのような真値を返したかを知ることができない。 それを知るためには、E2 は E1 と同じ計算を行って、 その結果 (数値、ベクタ、文字列など) を得るしかない。 残念なことに、AND は評価値が #f であるかどうかだけを調べたら、 その値を捨ててしまうのである。 E2 がその値を知りたければ、再計算するしかない。 このような欠点を補うため、式の評価値を保持することで再計算を行わないで済むような AND-LET* 特殊フォームを提案する。

AND-LET* は、LET* と AND を組み合わせたものとして捉えることができるし、 COND の => 演算子の一般化として捉えることもできる。 AND-LET* は、条件付き式のシーケンスだと捉えることもできる。 通常のプログラムでは、フォームは値を生成し、 それを変数に束縛して、別のフォームがそれを使えるようにする。 AND-LET* では、フォームが生成した値が #f ではないことを検査するという点で異なる。 ある式が #f に評価されると、 残りの式の評価は中断される (ある式が #f に評価されると、残りの式を評価する意味がないと判断される)。 以下に使用例を示す。

(AND-LET* ((my-list (compute-list)) ((not (null? my-list))))
          (do-something my-list))

(define (look-up key alist)
  (and-let* ((x (assq key alist))) (cdr x)))

(or
  (and-let* ((c (read-char))
    ((not (eof-object? c))))
    (string-set! some-str i c)
    (set! i (+ 1 i)))
  (begin (do-process-eof)))

			; A more realistic example
                        ; Parse the 'timestamp' ::= 'token1' 'token2'
                        ;   token1 ::= 'YY' 'MM' 'J'
                        ;   token2 ::= 'GG' 'gg' "/"
(define (parse-full-timestamp token1 token2)
  (AND-LET* (((= 5 (string-length token1)))
             ((= 5 (string-length token2)))
             (timestamp
               (OS:string->time "%m/%d/%y %H:%M"
                 (string
                   (string-ref token1 2) (string-ref token1 3) #\/
                   (string-ref token1 0) (string-ref token1 1) #\/
                   (case (string-ref token1 4)
                     ((#\8 #\9) #\9) (else #\0))
                   (string-ref token1 4) #\space
                   (string-ref token2 0) (string-ref token2 1) #\:
                   (string-ref token2 2) (string-ref token2 3))))
             ((positive? timestamp)))
           timestamp))

AND-LET* は、LISP の前方照応的 AND (anaphoric AND) マクロ [Rob Warnock, comp.lang.scheme, 26 Feb 1998 09:06:43 GMT, Message-ID: 6d3bb3$3804h@fido.asd.sgi.com] とも類似している。 しかし、AND-LET* は複数の中間値を扱うことができ、 その中間値を変数に束縛して、残りのフォームで使用することができる。

仕様

構文と非形式的な意味

AND-LET* (CLAWS) BODY

CLAWS ::= '() | (cons CLAW CLAWS)
CLAW  ::=  (VARIABLE EXPRESSION) | (EXPRESSION) |
           BOUND-VARIABLE

形式的な (外延的な) 意味

eval[ (AND-LET* (CLAW1 ...) BODY), env] =
   eval_claw[ CLAW1, env ] andalso
   eval[ (AND-LET* ( ...) BODY), ext_claw_env[CLAW1, env]]

eval[ (AND-LET* (CLAW) ), env] = eval_claw[ CLAW, env ]
eval[ (AND-LET* () FORM1 ...), env] = eval[ (BEGIN FORM1 ...), env ]
eval[ (AND-LET* () ), env] = #t

eval_claw[ BOUND-VARIABLE, env ] =
   eval[ BOUND-VARIABLE, env ]
eval_claw[ (EXPRESSION), env ] =
   eval[ EXPRESSION, env ]
eval_claw[ (VARIABLE EXPRESSION), env ] =
   eval[ EXPRESSION, env ]

ext_claw_env[ BOUND-VARIABLE, env ] = env
ext_claw_env[ (EXPRESSION), env ] =
   env-after-eval[ EXPRESSION, env ]
ext_claw_env[ (VARIABLE EXPRESSION), env ] =
   extend-env[ env-after-eval[ EXPRESSION, env ],
              VARIABLE boundto eval[ EXPRESSION, env ]]

実装

完全な実装と検証コードが ここ から入手できる (これは http://pobox.com/~oleg/ftp/Scheme/vland.scm のコピーである)。

この AND-LET* の実装は、(Gambit 用の) 低レベル マクロを使用しており、 AND-LET* を AND と LET のツリーに書き換える。 検証コードは、仕様どおりに動作することを検証するだけでなく、 AND-LET* が構文エラーを検出することも検証している。

著作権

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編集者: Dave Mason

最終更新日時: Sun Jan 28 13:40:28 MET 2007