表題

より一般化された cond

著者

Taylor Campbell

状態

この SRFI は現在「確定」の状態である。 SRFI の各状態の説明については ここ を参照せよ。 この SRFI に関する議論については メーリングリストのアーカイブ を参照せよ。

概要

この SRFI では cond 構文の拡張を提案する。 この拡張では、 より一般化された節を使うことができ、 => 節のようなテスト結果を束縛することができ、 テストの成功と失敗の意味をユーザー定義可能にする。

論拠

現状の cond 節は、単純なブール値のテストをベースにしている。 この制限は表現力が弱く、 => を使用する cond 節の条件部は 1つの値しか渡すことができないので、 #f が条件の失敗を表すという意味論にならざるを得ない。 プログラマは失敗を表すのに異なる表現を使うことがよくある。 R5RS の I/O リーダーは失敗を表すのに「EOF オブジェクト」を返すし、 成功した場合は複数の値を返すかも知れない。 ここで提案する簡単な拡張を使うと、 節ごとに「失敗」の意味を割り当てることができ、 条件が多重値を返すことができる。

仕様

R5RS の section 7.1.3 に示されている Scheme の形式構文における <cond clause> の生成規則を、新しいオプションを追加する形で拡張する。

  <cond clause> --->
      ...
    | (<generator> <guard> => <receiver>)

ここで <generator>, <guard>, <receiver> はすべて <expression> である。

この形式の節は次のような意味論を持つ: <generator> が評価される。 これは任意の個数の値を返すことができる。 <generator> の戻り値を引数リストとして <guard> を適用する。 その引数リストに対して <guard> が真を返すなら、 その同じ引数リストに対して <receiver> を適用する。 <guard> が偽を返すなら、 その節は無視され、次の節が試行される。

使用例

次に示す port->char-list 手続きは、 入力ポートを受け取り、その入力ポートの終端までの全ての文字のリストを返す。

  (define (port->char-list port)
    (cond ((read-char port) char?
           => (lambda (c) (cons c (port->char-list port))))
          (else '())))

テーブル (おそらくはハッシュ テーブル) とそのエントリのキーという 2つの引数を受け取る table-entry という手続きを考えてみよう。 この手続きは、キーがテーブルに存在するかを表すブール値と、 もしキーが存在するなら、そのキーに関連付けられた値、という2つの値を返すとしよう。 また、proj0 (引数 0 の射影) というコンビネータがあって、 これは、引数リストのうちの最初の引数のみを返し、 それ以外の引数を無視するとしよう。 このような場合、テーブルがキーを持ならば特定のコードを実行する条件分岐を、 新しい cond 節を用いて、次のようにして実装することができる。

  (cond ...
        ((table-entry <table> <key>) proj0
         => (lambda (present? value)
              ...[VALUE にはエントリの値が束縛される]...))
        ...)

実装

この新しい cond の構文トランスフォーマを以下に示す。 この実装では cond/maybe-more という補助マクロを使用している。 このマクロを使うと cond 節を持つ (または持たない) if 式を簡単に作成できる。 下記のコードはパブリック ドメインとする。

(define-syntax cond
  (syntax-rules (=> ELSE)

    ((COND (ELSE else1 else2 ...))
     ;; The (IF #T (BEGIN ...)) wrapper ensures that there may be no
     ;; internal definitions in the body of the clause.  R5RS mandates
     ;; this in text (by referring to each subform of the clauses as
     ;; <expression>) but not in its reference implementation of COND,
     ;; which just expands to (BEGIN ...) with no (IF #T ...) wrapper.
     (IF #T (BEGIN else1 else2 ...)))

    ((COND (test => receiver) more-clause ...)
     (LET ((T test))
       (COND/MAYBE-MORE T
                        (receiver T)
                        more-clause ...)))

    ((COND (generator guard => receiver) more-clause ...)
     (CALL-WITH-VALUES (LAMBDA () generator)
       (LAMBDA T
         (COND/MAYBE-MORE (APPLY guard    T)
                          (APPLY receiver T)
                          more-clause ...))))

    ((COND (test) more-clause ...)
     (LET ((T test))
       (COND/MAYBE-MORE T T more-clause ...)))

    ((COND (test body1 body2 ...) more-clause ...)
     (COND/MAYBE-MORE test
                      (BEGIN body1 body2 ...)
                      more-clause ...))))

(define-syntax cond/maybe-more
  (syntax-rules ()
    ((COND/MAYBE-MORE test consequent)
     (IF test
         consequent))
    ((COND/MAYBE-MORE test consequent clause ...)
     (IF test
         consequent
         (COND clause ...)))))

著作権

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編集者: Mike Sperber